2021.06.29

仙台商工会議所 高山秀樹事務局長

エス・ビジネスサポート

桜井康博(以下、桜井):私どもエス・ビジネスサポートは、2020年1月に会社を設立し、『会計を通じて元気な会社をより元気にする』という理念のもとに活動しています。企業の経営活動を支援することが主な事業になりますが、企業への支援活動は、商工会議所にとっても会員の皆様への重要なメニューの一つかと存じます。

ここで、改めて、商工会議所の役割や理念についてお話いただきたいと思います。

高山秀樹事務局長(以下、高山):商工会議所の目的は、地区内の商工業者の皆様の総合的な発展と、社会福祉の増進となっています。商工会議所の事業の一丁目一番地は、建議要望、つまり地域の方々の声を吸い上げて、政府等に働きかけていく、世論の形成です。大きく分けるとあと2つあり、一つは御社と同じように、中小企業の活力強化として経営支援をさせていただいていること、もう一つは中小企業の方々が働く基盤である地域経済の活性化、観光とか街づくりといった面でも事業を展開しています。

仙台商工会議所では、3か年ごとの中期ビジョンを策定し、それを実現するために毎年、事業計画を策定して、鋭意取り組んでおります。企業活力、地域力、組織力の3本柱を強化し、また、復興の先を見据えた地方創生の実現に取り組みましょう、というのが今の中期ビジョンでして、その3本柱は2010年から引き続いています。2019年から2021年までが4期目で、企業活力のところにプラスして生産性の向上、地域力のところに都市力向上を加えています。生産性の向上については、IT化を進めなければなりません。都市力向上では、震災による遅れもあり、急ピッチで街づくりの施策を展開しています。タイミングよく、市庁舎の建て替えや音楽ホール、メモリアルホール、定禅寺通りの活性化など、いろいろなプロジェクトが動き始めたので、ここをうまく活用していきたいですね。

会議所は現在、8900の会員にご入会いただいており、そのうちの半数以上、約5000件の方が小規模事業所になります。小規模事業所の経営者は、自ら労務に従事していて、経営の合理化などに割く時間がないため、商工会議所の経営指導員等が、資金繰りや融資の問題、あるいは経営、税務、経理、労務など様々な問題をサポートしています。また、経営指導員等でサポートできないような複雑な案件等については、士業の方のご支援をいただきながら無料で相談対応をさせていただいています。段々時代が変わってきて、平成26年6月に小規模基本法が成立し、小規模事業者等を持続発展させるための計画を立てて支援をしなさい、ということになり、商工会議所も5年ごとの経営発達支援計画を策定し、事業に取り組んでいます。さらに、小規模支援法が昨年5月に改正され、今までの記帳、金融指導や税務から、経営発達に軸が移り、需要の発掘、販売方法の変更、ビジネスモデルの再構築など、今までの件数の支援から質の支援に変わってきています。それに基づいて、4月からの経営発達支援計画も変えています。今までは件数がKPIでしたが、これからは、財務諸表なども入手し、それを見ながら、支援した事業者どれだけ成長したか、というのを成果として求められるようになってきています。広くご支援するというスタンスから、やる気のある事業所を支援する、その事業所を伸ばして、その地域を引っ張る企業に育てていこうというスタンスに変わってきているので、会議所の支援の方法も変わってきています。

桜井:会社の攻める部分と守る部分を、フロントとバックとすると、以前はバックのところを広くまんべんなくやっていたのが、今後は、販路開拓などフロントの部分を支援していくように、というイメージですね。

高山:商品開発もそうですし、会議所の職員のスキルも問われるようになってきているので、しっかりと職員の人材育成にも対応していかなければなりません。

桜井:我々は事業を立ち上げるとき、会計の力で元気な会社をより元気にするチームになりたいということを最初に掲げて、そのためには何ができるのか、ということを考えてきました。

商工会議所は会社のフロントのところを支援することに軸足を移されてきましたが、我々はフロントの部分だけで空回りしないようにするためにバックの部分の支援をできるようにしたいと思って活動しているところです。推進力はフロントなので、その推進力を下げないように、安定して推進できるようにするのが我々の仕事と思っています。

会計は会社の中の原動力ではありません。動力は、車に例えればエンジンとかタイヤにあたるものはビジネスで、経営者はドライバーで、そういったところを支援するのは商工会議所の新しい軸足の部分なのだろうと。我々は経営者の方が目的地に素早く、効率的に、安全にたどり着くために、会計というメーターをきちんと見えるようにするのが使命だと思っています。

よく、経営の見える化といわれますが、自分の状態が数字や形になって見えるためのお手伝いをしたい、それがそれぞれのステージの会社にとって安定的に素早く走るためのベースになってくれるのではないかという想いでビジネスを始めているところです。

高山:メーターは大切ですね。スピード、ガソリンの残量、回転数などは感覚だけでは分からない、メーターを見ていないと分からないですよね。

桜井:小規模事業者に対して、力を入れている経営の支援メニューはありますか。

高山:大事業承継時代と言われる中で、2年前から事業承継センターを設けており、基本的には小規模事業者の事業承継をサポートさせていたただくので、M&Aというよりも、親族内とか従業員への承継をサポートさせていただいています。辞めるのではなく、事業を承継していただくために、一緒に模索しながら次の方につないでほしいと思っています。

桜井:小規模事業者に対する我々の取り組みですが、今までは事業を楽しむという視点だったのを、経営を楽しむという次のステージにいくための支援が、小規模の方への経営の見える化だと思っています。会計で記録したものは過去の行動履歴なので、会計を見ることで、自分の会社の過去を知り、そして次の未来の予測できるようになっていき、さらには、経営を楽しむという方向に行けるように、いろいろなツールを使ってサポートしていきたいと考えています。

我々は数字を追いながらそこに行きますけど、商工会議所はストーリーを聞きながら一緒に考えていく、ということですね。アプローチは違っても、ベクトルは似ているな、と思います。

高山:我々が支援をしていく中で、ストーリーだけでなく、なぜそのストーリーになるのか、というところをしっかり示したいと思っています。データをバックボーンとした的確な助言、サポートができれば、経営者の方も納得いただけると思います。

桜井:見える化の中でも、小規模事業者の場合は経営者が見えるようになる、次は組織が見えるようになる、というのをテーマにしていて、そのために管理会計の導入をお手伝いしています。管理会計は経営者に自分がたどりつきたいというビジョンがあって、そこに行くまでにどういう足取りで行けばいいのか、どういう道をたどればいいのか、通っている道がずれていないのか、というのをチェックするためのものです。

高山:まさしく、メーターとナビですね。

会議所では販路支援をしていますが、震災以降、東北6県の被災地のためにという販路開拓が、今後はもっと足元を見た、仙台の会員の皆様の販路の支援に軸足を移して取り組んでいかないといけないと思っています。課題は、東北6県のサプライヤーが集まるからバイヤーも遠くから足を運んでくれているが、仙台だけだと、バイヤーにとってどれだけ魅力があるのかというのがあるので、そこは工夫しながらやっていかなければならなりません。

桜井:お客様が、毎月の利益やキャッシュ・フローが見えてくると、これだけ利益が出ているならこういうことをやってみたいなとか、施策のイメージが湧いてくるようです。数字を見ながら次の打ち手を考えるということもお手伝いさせていただいているので、商工会議所ともいろいろな形でコラボレーションしていきたいですね。

本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。

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